学部生の頃、芸術の講義にもぐって映画を観たことがある。
小津安二郎「お茶漬けの味」だった。
よくわからなかった。
ただ、「夫婦ってのはさ、お茶漬けみたいなのが良いんだよ」という台詞をメモしてある。
よくわからないけれど覚えていること、というものがある。
中学生の頃、進路をひとつに決めている人の方が偉い、という感覚は誰しも持っていたと思う。
でも私に、それだけじゃないことを伝えようとした会話が一度だけあった。
大学の専攻とは関係なく仕事を選び、さらに転職を重ね、今の仕事に辿りついた人の話をしてくれた。
当時の私には、まったくピンとこない話だった。
伝えようとしてくれていることが、わからなかった。
でも、ずっと覚えていた。
先日、津村記久子『ウエストウイング』を読んだ。
その中で、「人生には様々なバリエーションがある」ということを、そこらへんの小学生と語り合いたい気もする、というようなことを登場人物(会社員の女性)が思う場面がある。
そういうことだったのだと思った。
「人生には様々なバリエーションがある」ことを伝えようとしてくれていた。
よくわからないけれど覚えていること、の重要性を最近よく考えている。
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