五分だけ、と断ってから桜の木見上げるどうぞこころゆくまで
その日は、新学期が始まる前の4月だった。
花見の予定ではなかった。
しかし、あまりに気持ちよい陽気の、さくら降る下で、みとれぬわけにはいかないのは私も同じだった。
五分だけと言わず、どうぞこころゆくまで。
*
沈黙の春のレイチェル・カーソンの真逆のような風が通った
見上げる沈黙の中を、風が通った。
ざわざわと賑やかだった。
*
「花見といったら三色団子でしょ」ピンクはさくらの味がしますか
繰り返すが、花見の予定ではなかった。
しかし、三色団子を買いにコンビニを梯子したという。
「ローソンにもなくってね、……」
三色団子って味ちがうのかなあ。ピンクはさくらの味がしますか?
*
はなびらで描いた矢印すぐさっきまでここにひとがいたんだねえ
誰かが花弁をならべて落書きをしたようだ。
花弁はすぐ飛んでいってしまうのに、まだ形が明確だ。すぐさっきまでひとがいたんだねえ。
*
短歌は、記憶を閉じこめておくことができる、匂い袋のようなものだと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿