2013年12月4日水曜日

五分だけ、と断ってから桜の木見上げるどうぞこころゆくまで


その日は、新学期が始まる前の4月だった。
花見の予定ではなかった。
しかし、あまりに気持ちよい陽気の、さくら降る下で、みとれぬわけにはいかないのは私も同じだった。
五分だけと言わず、どうぞこころゆくまで。


沈黙の春のレイチェル・カーソンの真逆のような風が通った


見上げる沈黙の中を、風が通った。
ざわざわと賑やかだった。


「花見といったら三色団子でしょ」ピンクはさくらの味がしますか


繰り返すが、花見の予定ではなかった。
しかし、三色団子を買いにコンビニを梯子したという。
「ローソンにもなくってね、……」
三色団子って味ちがうのかなあ。ピンクはさくらの味がしますか?


はなびらで描いた矢印すぐさっきまでここにひとがいたんだねえ


誰かが花弁をならべて落書きをしたようだ。
花弁はすぐ飛んでいってしまうのに、まだ形が明確だ。すぐさっきまでひとがいたんだねえ。



短歌は、記憶を閉じこめておくことができる、匂い袋のようなものだと思う。

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