小さい頃、母はよくピアノを弾いていた。
どんな曲が好き?と母が聞くと、私は「ちゃらんぽらんしたやつ」と答えたそうだ。
はて。「ちゃらんぽらんしたやつ」とは一体。
母は、自分のレパートリーに「ちゃらんぽらん」な曲があったか、必死に考えた。
「これ?」「ちがう」「これは?」「うーん、もっと踊っちゃうような……」
そんなこんなの末、どうやら、ドビュッシーの「子供の領分」であることが判明した。
ゴリウォーグのケークウォーク。
2拍子の、出だしがとくに好きだった。
飛び跳ねて、ダダダダーンと着地する。
曲の中にグッと引き込まれる感覚が、なんともいえず好きだった。
私がピアノを弾くようになって、ひとつわかったことがある。
聴くのが好きな曲と、弾くのが好きな曲は、違う。
前述したとおり、私は、音が自由に飛び跳ねる、踊っちゃうような楽しい曲を聴くのが好きだった。
しかし自分が弾くとなると、静かな、バラードのような曲のほうが得意だった。
好きと得意が同じこともあるけど、違うこともある。
「ちゃらんぽらん」の曲は、そのことを初めて理解した記憶とつながっているのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿